AWS Bedrockの料金計算:月間トークン消費量から予算を試算する方法

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「Bedrockの月額コストを週内に概算してほしい」——そう依頼されて公式の料金ページを開いたとき、「1Mトークンあたり◯ドル」という表記を見ても計算の起点がつかめない、という状況はよくあります。自社のユーザーが1ヶ月に何トークン消費するのかの感覚がないからです。

月間費用の基本式はシンプルです。

月間費用 = 月間リクエスト数 × (平均入力トークン × 入力単価/1M + 平均出力トークン × 出力単価/1M)

この式に自社の数字を当てはめるために、3点を把握しておく必要があります。

  • 課金方式が3種類あり、どれを選ぶかで単価が変わること
  • 「トークン」という単位が日本語利用では膨らみやすいこと
  • モデルのトークン単価以外にも試算に含めるべき費用があること

この3点を整理したうえで、月間費用の試算手順を3ステップで示します。


Bedrockの料金体系:3つの課金方式

AWS Bedrockでは、用途に応じて3つの課金方式から選択します。

オンデマンド(従量課金)

コミットなしで使った分だけ支払う方式です。PoC(Proof of Concept:概念実証)や小規模環境での導入に向いています。

課金単位は1Mトークン(100万トークン)単位の従量制で、入力と出力で単価が異なります。サービスティアはStandard・Priority・Flexの3種類があります。AWSの公式サービスティアページによると、Priorityティアの単価はStandard比+75%、Flexティアは-50%です(2026年7月時点)。

モデルごとの具体的な単価は変更が頻繁なため、Amazon Bedrock公式料金ページで最新値を確認してください。

バッチ推論(非リアルタイム処理で50%割引)

複数のリクエストをまとめてファイルベースで非同期処理する方式です。ドキュメントの一括要約や大量データの分類など、リアルタイムの応答が不要な処理に向いています。

AWSの公式料金ページによると、オンデマンドの標準単価と比べて50%低い価格で利用できます。後述するプロンプトキャッシングとの同時使用はできないため、どちらを優先するかは用途に応じて判断が必要です。

プロビジョンドスループット(本番環境・料金は要問い合わせ)

一定のスループット(単位時間あたりの処理能力)とレイテンシを保証する方式です。ユーザー向け本番サービスなど、応答速度のSLAを定めたい環境に向いています。

料金は公式ページでは非公開で、「please reach out to your account team」と案内されています。具体的な数字が必要な場合は、AWSのアカウントチームへ問い合わせてください。


トークン数とは:日本語テキストで費用が変わる理由

トークンとは、モデルがテキストを処理するときの最小単位です。単語でも文字でもなく、モデルの語彙分割(トークナイズ)に依存したチャンクで、英語と日本語では消費量が大きく異なります。

cloudburn.ioによると、英語では約4文字または0.75ワードが1トークンに相当します。一方、AISmileyによると日本語は1〜2文字程度が1トークンに対応します。

同じ情報量のテキストでも、日本語では英語の2〜4倍のトークンを消費します。社内チャットボットや日本語ドキュメントの要約をユースケースとして試算する場合、英語ベースのサンプル計算をそのまま使うと実際の費用を大幅に低く見積もるリスクがあります。

入力と出力の料金差

入力トークンと出力トークンは単価が異なり、出力の方が高い設定になっています(比率はモデルにより異なるため Amazon Bedrock公式料金ページ で確認してください)。長い回答を生成するユースケースでは、出力トークンのコストが月間費用の大半を占めることがあります。

入力トークンには次のものすべてが含まれます。

  • システムプロンプト(モデルへの事前指示・役割定義・制約条件)
  • ユーザーのメッセージ
  • RAGで注入した参照ドキュメント(コンテキスト)

RAG(Retrieval-Augmented Generation)とは、外部の知識ベースから関連情報を検索してプロンプトに挿入する手法です。RAGを使うシステムでは、毎リクエストに大量のコンテキストが入力トークンとして加算されるため、試算時に特に注意が必要です。

CountTokens APIで実測値を取る

CountTokens APIは、推論を実行する前にトークン数を事前計算できるAPIです。公式ドキュメントによると、このAPIで返されるトークン数は実際に推論時に課金されるトークン数と一致します。プロンプトの設計段階でCountTokens APIを使って実測値を取ることで、試算精度が上がります。


月間費用の試算手順:3ステップ

ステップ1:月間リクエスト数を見積もる

利用部門の人数と利用頻度から計算します。

月間リクエスト数 = ユーザー数 × 1日あたりの平均リクエスト数 × 月間稼働日数

「対象部門10名・1人あたり1日20回・月間20稼働日」のように、担当者に確認できる単純な数字から始めてください。PoC段階では過大見積もりより、実測後に修正する前提で計算を進める方が現実的です。

ステップ2:1リクエストあたりのトークン数を見積もる

入力トークンと出力トークンを分けて見積もります。

入力トークン(1リクエストあたり)の構成要素

  • システムプロンプト(役割定義・制約条件・出力形式の指示)
  • ユーザーのメッセージ
  • RAGで注入するコンテキスト(使用する場合)

日本語テキストは英語の2〜4倍のトークンを消費するため、日本語でシステムプロンプトを書いている場合は入力トークンが膨らみます。CountTokens APIで実測値を取ることを推奨します。

出力トークン(1リクエストあたり)

モデルに期待する回答の長さから推測します。短い要約や分類タスクなら数十〜数百トークン、長文生成なら数千トークンになることがあります。

ステップ3:モデル単価を掛けて月間費用を算出する

ステップ1・2で求めたパラメータを基本計算式に代入します。

月間費用 = 月間リクエスト数 × (平均入力トークン × 入力単価/1M + 平均出力トークン × 出力単価/1M)

モデルごとの入力・出力単価はAmazon Bedrock公式料金ページで確認してください。

以下は試算に使うパラメータの想定例です。単価列は公式ページで確認した値を代入してください。

パラメータ小規模PoC(想定例)中規模本番(想定例)
ユーザー数10名100名
1日あたりリクエスト数/人20回50回
月間稼働日数20日22日
月間リクエスト数(合計)4,000回110,000回
平均入力トークン/リクエスト1,0003,000
平均出力トークン/リクエスト5001,000
モデル単価(入力・出力)公式ページで確認公式ページで確認

費用感の参考値

AI総合研究所(2026年4月時点)の試算例によると、Claude Sonnet 4.6で1日あたり10万トークン(入力7万・出力3万)を処理した場合、1日のコストは約$0.66(約100円)、月間で約$20(約3,000円)という水準です。小規模なPoCであれば月数千円〜数万円の範囲から始められる感覚値として参照してください。


コスト削減の主な選択肢

試算が出たあとで検討する削減オプションを4つ整理します。

プロンプトキャッシング

同一のシステムプロンプトや参照ドキュメントを複数のリクエストで繰り返し使う場合に有効な機能です。初回にキャッシュへ書き込んでおき、2回目以降はキャッシュから読み出すことで大幅なコスト削減が可能です。

公式ドキュメントによると、Claude 3.5 Sonnet v2(2026年7月時点)のオンデマンド標準入力単価は$6.00/1M、キャッシュ書き込みは$7.50/1M(初回のみ)、キャッシュ読み出しは$0.60/1Mです。標準単価の90%割引になる計算です。TTL(キャッシュ保持時間)は5分(一部モデルは1時間オプションあり)で、バッチ推論APIとの同時使用はできません。

バッチ推論

急ぎでない処理に使える非同期方式で、オンデマンド比50%割引です。

Flexティア

同期APIを使いながら遅延を許容できる処理向けのサービスティアで、Standard比50%割引です。即時応答が不要なバックグラウンド処理に選択肢となります。

インテリジェントプロンプトルーティング

リクエストの複雑さに応じてモデルを自動選択し、シンプルなリクエストをより低コストのモデルへ振り分ける機能です。コスト削減が期待できますが、実際の削減率は自社のワークロードとプロンプトの構成に依存するため、自社環境での検証が必要です。


試算に含めるべき隠れコスト

モデルのトークン単価だけで月額費用の見積もりを出すと、実際の請求額との乖離が生じます。予算申請の段階で把握しておくべき追加費用を整理します。

Knowledge Base(OpenSearch Serverless)

Knowledge Baseとは、AWSが提供するRAG機能の管理サービスです。外部ドキュメントをインデックス化して検索・注入する基盤として使います。デフォルト構成ではOpenSearch Serverless(全文検索・ベクター検索エンジン)を使用します。

OCU(OpenSearch Compute Unit)はOpenSearch Serverlessの処理能力の単位で、Knowledge Baseの動作には最低2基が必要です。cloudburn.ioによると、この最低構成だけで月額約$350(2026年7月時点)の基盤コストが別途発生します。トークン課金とは別の固定費として試算に加えてください。

Amazon S3 Vectors(S3のベクターストア機能)へ切り替えることで大幅なコスト削減の可能性がありますが、2026年7月時点では機能の制約があるため、導入前に公式ドキュメントで最新状況を確認してください。

Agentのトークン乗数

Bedrockエージェントとは、自律的にツールを呼び出してタスクを完了するAI機能です。1回のユーザーリクエストが内部でプランニング・ツール選択・実行・最終回答生成と複数のステップを踏むため、トークン消費が増加します。cloudburn.ioによると、この内部処理によりトークン消費が単純計算の5〜10倍になるケースがあります。Agentを使うシステムでは、ステップ2のトークン試算にこの乗数を考慮してください。

Guardrails

Guardrailsは、有害なコンテンツや特定トピックへの言及をフィルタリングする機能です。必要な場合は$0.30/1,000テキストユニットのコストが発生します(Amazon Bedrock公式料金ページ)。用途に応じて必要なフィルターだけを有効化することが節約策になります。

CloudWatch Logging

モデルへの入力・出力を記録する場合、CloudWatch Logsのデータ取り込み料金が別途発生します(単価は CloudWatch公式料金ページ で確認してください)。本番環境では記録するログの範囲を絞ることを推奨します。

無料ティアなし

AWS Bedrockには永続的な無料ティアが存在しません。cloudburn.ioのとおり、最初のAPIコールから課金が発生します。なお、2025年7月15日以降に作成した新規AWSアカウントには$200分のクレジットが付与されます(6ヶ月有効)。PoC段階での費用負担を下げる選択肢として確認してください。

東京リージョンでのClaude系モデル利用

クロスリージョン推論プロファイルとは、特定のリージョンにモデルがデプロイされていない場合に、別リージョンへリクエストを転送する仕組みです。Claude Sonnet 4.6などのClaude系モデルは東京リージョン(ap-northeast-1)でのIn-Region提供がなく、クロスリージョン推論プロファイル経由での利用になります。東京向けの公式単価が明示されていないため、現時点での試算値は参考値として扱い、実際の請求額と照合してください。


費用試算に使えるツール

公式AWS Pricing Calculator

calculator.awsはAWSサービス全般の費用試算ツールです。Bedrockへの対応状況は変更される可能性があるため、利用前に公式ページで最新の対応状況を確認してください。

サードパーティ製ツール(参考)

  • cloudburn.io Bedrock料金計算ツール:東京リージョンに対応したブラウザ上で動く計算ツールです。
  • ahref.org AIモデル料金早見表:AWS Price Listをベースにした第三者集計ツールです(公開タイムスタンプ:2026年5月4日)。参考値として活用できますが、単価の確認には公式料金ページと照合することを推奨します。

CountTokens API

推論前に実際の課金トークン数を計算できる公式APIです。検証フェーズでCountTokens APIを使って実測値を取ってから試算に反映することで、予算申請の精度が上がります。


手順はつかめた——でも自社の具体的なユーザー数・ユースケース・モデル選択に当てはめると、何を選ぶべきか判断が難しい。そういった段階でのご相談にも対応しています。

モデル選定・Knowledge Base構成・月額概算のレビューなど、まだ導入を検討している段階からでも受け付けています。

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