Cloudflare DNSプロキシ(オレンジ雲)のオンオフ:メリットと外すべきケース

ネットワーク・DNS初級
CloudflareDNSCDNProxy

TL;DR

Cloudflareのダッシュボードで見る雲アイコンには2種類ある。オレンジ雲(Proxied) はそのレコードへの通信をCloudflare経由にして、キャッシュ・WAF・DDoS対策を効かせる状態。グレークラウド(DNS only) はCloudflareがDNSの答えを返すだけで、通信は直接オリジンサーバーに届く状態。Webサイトを公開するAレコード・CNAMEレコードは基本オレンジ雲にすべきだが、メール(MXレコード)やSSH、非HTTPプロトコルを流すレコードはオレンジ雲にできない、あるいはすると壊れる。この使い分けを間違えると「メールが届かない」「SSHにつながらない」といった事故につながる。


オレンジ雲(プロキシ)とは何か

Cloudflareの公式ドキュメントによると、DNSレコードには「プロキシステータス」という設定があり、これがHTTP/HTTPS通信をCloudflareのネットワーク経由にするかどうかを決めている。

  • レコードが Proxied(オレンジ雲) のとき、Cloudflareは訪問者とオリジンサーバーの間に入り、通信を最適化・キャッシュ・保護する。
  • レコードが DNS only(グレークラウド) のとき、Cloudflareはそのレコードの実際のIPアドレスをそのまま返し、HTTP/HTTPS通信はCloudflareのネットワークを経由しない。

プロキシ可能なのは、IPアドレス解決に使われるレコード種別、つまり A・AAAA・CNAMEレコードのみ。MXやTXTなど他のレコード種別は常にDNS onlyになる(DNSレコードとは何かも参照)。

オレンジ雲にすると何が起きるか。公式ドキュメントは次の3点を挙げている。

  1. オリジンサーバーをDDoS攻撃から保護する
  2. すべてのリクエストを最適化・キャッシュ・保護する(Cloudflareキャッシュを完全制御するで扱った挙動もこの上に乗る)。
  3. WAFルール・キャッシュ設定・リダイレクトルールなど、Cloudflare側の各種設定を着信トラフィックに適用する(WAFとは何か参照)。

具体的には、オレンジ雲のレコードへのDNSクエリには、オリジンの実IPではなくCloudflareのエニーキャストアドレス(共有IP) が返る。これにより、そのドメイン宛のHTTP/HTTPS通信はいったんCloudflareのネットワークに着地し、そこから上記の保護・高速化機能がかかった上でオリジンへ転送される仕組みだ。CDNの基本とCloudflareを使う理由でも触れた「間に挟まる」構造そのものと考えていい。

一方でグレークラウドのレコードは、DNSクエリに対してオリジンサーバーの実IPをそのまま返す。これはオリジンのIPアドレスが誰にでも見える状態になることを意味し、ターゲット型攻撃に対する防御層が一枚外れる、と公式ドキュメントは明記している。加えてCloudflareはHTTP/HTTPSのアナリティクスも提供できず、見えるのはDNSのアナリティクスのみになる。


オレンジ雲を有効にすべきケース

公式の「Use cases」ページでは、HTTP/HTTPSのWebトラフィックを扱うA・AAAA・CNAMEレコードはすべてプロキシすべき、とされている。具体的には次のようなレコードが対象だ。

  • 自社サイト・Webアプリ本体(example.comwww.example.com)
  • Webコンテンツを配信するサブドメイン(blog.example.comapp.example.com)
  • オリジンIP検証を必要としないHTTP/HTTPS APIエンドポイント

これらをプロキシすることで、DDoS対策・キャッシュ・WAFといったCloudflareのセキュリティ/パフォーマンス機能の恩恵をそのまま受けられる。個人ブログから中小企業のコーポレートサイトまで、「不特定多数に公開するWebサイト」であれば、まずオレンジ雲をオンにしておくのが既定路線と考えていい。


オレンジ雲を外すべき・外さざるを得ないケース

逆に、プロキシと相性が悪い、あるいは物理的にプロキシできないレコードもある。公式ドキュメントが明示しているケースを整理する。

メール関連レコード(MX・メール専用のA/AAAA)

MXレコードはそもそもプロキシ対象外で、常にDNS onlyになる。さらに注意が必要なのは、メール専用に使っているA/AAAAレコード(例: mail.example.com)だ。CloudflareはデフォルトでポートSMTP(25番)をプロキシしないため、メールを扱うレコードをプロキシ状態にすると、メールサーバーへの接続先がCloudflareのIPになってしまい、メール配信が失敗する。Webサイトと同じホスト名をMXレコードに使っている場合は、メール用に別ホスト名を用意して分離するのが公式の推奨だ。

SSH・RDP・ゲームサーバーなど非HTTPプロトコル

Cloudflareのプロキシが扱えるのはHTTP/HTTPS通信のみ。FTP・SSH・RDP・ゲームサーバーなど非HTTPプロトコルに使うレコードはDNS onlyにする必要があり、これをプロキシすると、Cloudflareが非HTTP接続をドロップしてしまう。どうしてもこれらのプロトコルをCloudflare経由で保護したい場合は、Cloudflare Spectrumという別製品を使う必要がある(通常プランのプロキシ機能では対応不可)。

ドメイン所有権確認用のCNAME/TXTレコード

Google WorkspaceやAWS Certificate Manager(acm-validations.aws)、Squarespaceなど、サードパーティサービスの所有権確認用に発行されるCNAME/TXTレコードも同様だ。これらをプロキシすると、期待される確認用の値の代わりにCloudflareのIPが返ってしまい、検証に失敗する。確認が完了するまでDNS onlyにしておく、あるいはサービスによっては恒久的にDNS onlyが必須になる。

SaaSプラットフォームでホストしているサイト

Wix・Squarespace・Webflowなど、SaaSプラットフォーム側でサイトを配信している場合、そのレコードをプロキシするとSSLエラー(CloudflareとSaaS側の両方がSSL終端しようとして証明書が不一致になる)、リダイレクトループ、アセットの表示崩れなどが起きうる。プラットフォームがCloudflareプロキシを公式サポートしていない限り、DNS onlyにするのが安全だ。

Windows認証(NTLM/Kerberos)を使う環境

やや専門的だが、公式の「Limitations」ページには、Microsoft Integrated Windows Authentication・NTLM・KerberosはHTTP/1.1仕様に反する挙動をするため、プロキシされたDNSレコードと互換性がない、という記述がある。NTLMはTCP接続レベル(レイヤー4)で認証するが、Cloudflareは同一クライアントからの連続リクエストが同じTCP接続をオリジンまで維持する保証をしないため、認証プロンプトが繰り返される、あるいは認証ループに陥ることがある。社内向けWindows認証を伴うアプリを公開する際は要注意だ。


「digで返るIPが違う」への理解

オレンジ雲を有効にした直後によくある混乱が、「サーバーに設定したはずのIPと、dignslookupで引いたIPが一致しない」というものだ。

dig example.com +short
# → 104.21.xx.xx のようなCloudflareのIPが返る

これは設定ミスではなく、オレンジ雲の仕様通りの挙動だ。公式ドキュメントが説明する通り、プロキシされたレコードへのDNSクエリには、オリジンの実IPではなくCloudflareのエニーキャストアドレスが返る。オリジンの実IPを直接引きたい場合は、Cloudflareダッシュボードの該当レコードを開いて「Content」欄を確認する必要がある(digでは出てこない)。

同じ理屈で、オリジンサーバー側のアクセスログを見ると、訪問者のIPではなくCloudflareのIPがリクエスト元として記録される。これはIPベースの認証・レート制限・地域判定を行っているアプリでは正しく動作しない原因になる。公式ドキュメントは、Cloudflareが元の訪問者IPを CF-Connecting-IP および X-Forwarded-For リクエストヘッダーに含めているため、オリジン側はそこから実IPを読み取るよう設定変更が必要、としている。nginxやアプリケーションフレームワーク側で、この2つのヘッダーを信頼するよう明示的に設定しておくことが、オレンジ雲運用の実務上の必須作業になる。

また、プロキシされたレコードではTLSがCloudflareのエッジで終端し、オリジンとの間には別のTLS接続が張られる。つまりオリジンサーバーはエンドユーザーのクライアント証明書を直接受け取れない。mTLS(相互TLS認証)が必要な構成では、Client Certificates機能やAuthenticated Origin Pullsなど別の仕組みで代替する必要がある点も、公式ドキュメントに明記されている。


まとめ

項目オレンジ雲(Proxied)グレークラウド(DNS only)
通信経路Cloudflare経由オリジンに直接
digで返るIPCloudflareのエニーキャストアドレスオリジンの実IP
DDoS対策・WAF・キャッシュ有効適用されない
対応レコード種別A・AAAA・CNAMEのみすべてのレコード種別
メール(MX)不可(常にDNS only)必須
SSH・RDP・ゲームサーバー等不可(Spectrumが必要)必須
ドメイン所有権確認レコード検証失敗の原因になる推奨
SaaSプラットフォーム(Wix等)SSLエラー・ループの原因になる推奨
訪問者の実IP取得CF-Connecting-IP/X-Forwarded-Forヘッダーが必要アクセスログにそのまま記録

基本方針はシンプルだ。「不特定多数に公開するWebサイト・Web API」はオレンジ雲、それ以外(メール・非HTTPプロトコル・所有権確認・SaaS配信済みサイト)はグレークラウド。1つのドメインの中でも、レコードごとに使い分けるのが正しい設計であり、「ドメイン全体を一律オレンジ雲にする/しない」という発想自体が間違いのもとになる。設定を変えたら、必ず対象レコードの用途(Web/メール/SSHなど)を確認してから、雲アイコンを切り替える習慣をつけたい。

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