自宅サーバーの電気代試算:24/7常時稼働のランニングコスト
結論: 10Wで動く省電力機なら月262円、100W超のデスクトップPCなら月2,600円超。VPS(2GB帯)と比べた回収期間は本体5万円なら約50ヶ月(約4年強)。エントリーVPS(460円帯)との差は小さく、安価なプランと戦うには4年以上同じ機材を使い続ける必要がある。
電気代の計算式はシンプル——まず基本を押さえる
「常時稼働の電気代が読めない」という理由でサーバー構築を先送りしている場合、計算式を一度通しで見ると霧が晴れます。
計算式は次の通りです。
月額電気代(円) = 消費電力(W) ÷ 1000 × 24時間 × 30日 × 電力単価(円/kWh)
電力単価は東京電力エナジーパートナーの従量電灯B・第2段階料金(月120〜300kWhの範囲)をベースに、本記事では 36.4円/kWh を使います(出典: 東京電力エナジーパートナー 料金単価表(電灯)・2026年6月時点)。
なお、競合記事の多くは27〜31円/kWhを使っています。これは試算時点や電力会社の違いによるもので、単純比較すると2〜3割ほど安く見えます。本記事が36.4円を使う理由は、東電の公式料金表から直接引いた数値だからです。
燃料費調整額と再エネ賦課金については試算に含めていません。 この2項目は毎月変動するため固定値での計算が難しく、実際の支払いはここで示す試算よりもう少し高くなります。概算で月に1〜2割増しを見ておくと安全です。
消費電力別の年間電気代一覧
36.4円/kWhで統一した早見表です。
| 消費電力 | 月額電気代 | 年額電気代 |
|---|---|---|
| 5W | 131円 | 1,572円 |
| 10W | 262円 | 3,146円 |
| 20W | 524円 | 6,291円 |
| 50W | 1,310円 | 15,725円 |
| 100W | 2,621円 | 31,450円 |
10Wで動く機材なら月262円——コーヒー1杯分のコストで24時間365日稼働します。この数字を見ると「電気代が怖い」という感覚が、かなり具体的な数値に変わります。
100Wを超えるデスクトップPCをサーバーとして常時稼働させると、月2,600円超・年3万円超になります。省電力機との年間差は約3万円。数年で本体代に匹敵する差がつきます。
ハードウェア別の実力値——何Wで動くか
試算の土台となる消費電力値を、ハードウェア別に確認します。
Raspberry Pi 5(一次ソース確認済み)
VPNガジェットナビの計測データによると、アイドル時約3.3W、高負荷時約8.0W です(元データの計算単価は31円/kWh)。36.4円/kWh換算では次のとおりです。
| 状態 | 消費電力 | 月額電気代(36.4円/kWh換算) |
|---|---|---|
| アイドル | 3.3W | 約86円 |
| 高負荷 | 8.0W | 約209円 |
常時ファイルサーバーやGitホスティング程度の用途ならアイドルに近い状態が続くため、月100円以下で運用できるのがPi 5の最大の強みです。
ただし、Pi 5はARM(Cortex-A76)アーキテクチャです。x86専用バイナリや一部のDockerイメージは動作しません。「とにかく省電力で軽いサービスを動かす」用途以外では、後述のN100ミニPCの方が扱いやすいケースが多いです。
N100搭載ミニPC(TDPは公式確認済み・全体消費電力は推定)
Intel N100のTDPはIntel公式仕様書で 6W(最大クロック3.40GHz、4コア4スレッド)と確認されています。
ただし「TDP 6W」はCPU単体の熱設計電力であり、マザーボード・メモリ・SSD・ファン等を含むシステム全体の消費電力ではありません。ミニPC全体での実際の消費電力は、用途や構成によって異なります。各所の実測報告を参照すると、アイドル時で 6〜12W程度 とされるケースが見られますが、これは推定値です。正確な値はワットチェッカー(電力計)で実機計測するのが確実です。
| 消費電力の前提 | 月額電気代(36.4円/kWh換算) |
|---|---|
| 6W(推定・アイドル軽め) | 約157円 |
| 12W(推定・中負荷) | 約314円 |
いずれにしても、月200〜300円台に収まる可能性が高い範囲です。
一般デスクトップPC(比較対象)
上記の2機種と比較するために示す参考値です。一般的なデスクトップPCをサーバーとして常時稼働させると、消費電力は用途や構成によりますが 50〜100W以上 になるケースが多く、月額電気代は1,310〜2,621円(36.4円/kWh)の範囲に入ります。電気代の観点からは、省電力機専用機と比べて 月1,000〜2,500円ほど多くかかります。
VPSと比べて本当に安いか——回収期間まで計算する
ここが本記事の核心です。電気代の絶対額だけで「安い」と判断するのは不十分で、本体代の回収期間まで含めて考える必要があります。
ConoHa VPS 2GB帯との比較
ConoHa VPSの2GB/3コア/100GB SSDプランは 1,259円/月(まとめトク長期割引適用後の料金。都度払いはこれより高い。出典: ConoHa VPS料金ページ・2026年6月時点)。
N100ミニPCが仮に10W稼働として電気代は 262円/月。差し引き 約997円/月の節約になります。
本体代を5万円とすると:
50,000円 ÷ 997円 ≈ 50ヶ月(約4年強)
約4年使い続けると、本体代を電気代込みで回収できる計算です。VPS代を自宅サーバーの電気代と本体償却で置き換えるには、4年以上同じ機材を稼働させ続けることが前提になります。
ConoHa VPS 512MB(460円帯)との比較
最安帯の512MB/1コアプランは 460円/月(都度払い・2026年6月時点。出典: ConoHa VPS料金ページ)。N100の10W=262円との差は 約198円/月。
50,000円 ÷ 198円 ≈ 253ヶ月(約21年)
回収に21年かかる計算では、コスト面では実質不成立です。「VPSの最安プランで足りる用途」であれば、自宅サーバーをコスト目的で建てる意味はほぼありません。
回収期間まとめ
| 比較対象 | 月額節約額 | 本体5万円の回収期間 |
|---|---|---|
| ConoHa 2GB(1,259円) | 約997円 | 約50ヶ月(約4年強) |
| ConoHa 1GB(763円)(ConoHa VPS料金ページ・2026年6月時点) | 約501円 | 約100ヶ月(約8年) |
| ConoHa 512MB(460円) | 約198円 | 約253ヶ月(約21年) |
結論: コスト目的で自宅サーバーを選ぶなら、VPS 2GB以上を4年超使い続けるか、それ以上の容量が必要な用途が前提になります。
コスト以外の理由——データを手元に置きたい、ネットワーク構成を自由にカスタマイズしたい、学習目的——であれば、回収期間の計算とは別の軸で判断できます。
省電力ミニPC vs Raspberry Pi 5——用途別にどちらを選ぶか
2機種を比較します。
| 項目 | N100ミニPC | Raspberry Pi 5 |
|---|---|---|
| 消費電力 | 推定6〜12W | アイドル3.3W・高負荷8.0W |
| 月電気代(36.4円/kWh) | 推定157〜314円 | 86〜209円 |
| 年電気代(同上) | 推定1,884〜3,768円 | 1,038〜2,508円 |
| アーキテクチャ | x86(Intel) | ARM(Cortex-A76) |
| Docker対応 | ほぼ全イメージ動作 | ARMイメージ限定 |
| 向く用途 | ファイルサーバー・軽量Web・CI/CD・コンテナ全般 | 超省電力・センサーデータ収集・ARMネイティブ用途 |
Raspberry Pi 5はアイドル3.3Wという電気代の低さが圧倒的ですが、ARM制約があります。「とにかく電力を絞って長期稼働させたい・x86バイナリへの依存が無い」用途に向いています。
N100ミニPCはTDP 6WのCPUでありながらx86のDockerエコシステムをそのまま使えます。ファイルサーバー・GitLab・Nextcloud・軽量Webサービスなど、汎用的な用途で選びやすい一台です。
省電力ミニPCを選ぶなら
N100搭載のBeelink MINI-S12シリーズは、省電力・コンパクト・12GB LPDDR5メモリと、自宅サーバー用途のバランスが取れた構成です(Amazon商品ページ記載仕様・2026年6月時点)。
Beelink MINI-S12 Pro N100 / 12GB / 512GB SSD(Win11付属)
月200円台の電気代で24時間稼働できる構成。SSD 512GBはOS+サービス用として十分な容量で、外付けHDDやNASと組み合わせてストレージを拡張できます。
Amazonで確認する(Beelink MINI-S12 Pro N100)
予算を抑えたい場合は、N95搭載の無印MINI-S12もあります。N100とN95はクロックや対応機能に若干の差がありますが、自宅サーバーの軽量用途では実用上の差を感じにくいケースが多いです。
Beelink MINI-S12 N95 / 12GB / 256GB SSD(Win11付属)
Amazonで確認する(Beelink MINI-S12 N95)
Raspberry Pi 5で始めたい場合は、電源・ケース・冷却がセットになったスターターキットが確実です。単体で揃えると規格確認や互換性チェックに時間がかかるため、最初の一台はセット品が実用的です。
RasTech Raspberry Pi 5 8GB スターターキット(電源・ケース・冷却込み)
Amazonで確認する(RasTech Pi 5 8GBセット)
まとめ——自分の用途で試算してみる
本記事で示した試算をまとめます。
- 電力単価: 36.4円/kWh(東京電力エナジーパートナー 従量電灯B 第2段階・燃料費調整等は別途)
- 10W機(N100ミニPCの推定値): 月262円・年3,146円
- 3.3W機(Pi 5アイドル): 月86円・年1,038円
- VPS 2GB(1,259円/月)との差: 月約997円 → 本体5万円の回収は約50ヶ月
「デスクトップPCをそのままサーバーにする」という選択は、電気代だけで年3〜5万円になることがあります。省電力専用機との差は年間2〜4万円規模になるため、長期稼働を前提にするなら最初から省電力機を選ぶのが合理的です。
試算は消費電力の実測値によって変わります。ワットチェッカー(消費電力計)を手元に置いて、稼働中の機材を実測するのが一番確実です。カタログ値やTDPと実測値の乖離は珍しくありません。
実際の電気代は、燃料費調整額・再エネ賦課金・基本料金を含めた請求額で確認してください。