Qwen3-14B vs Gemma 3 27B vs Llama 3.1 70B:社内業務LLMの実用性比較
結論:
- 日本語業務が主軸 + VRAM 24GB以下 → Qwen3-14B(Apache 2.0・Q4_K_M で約9〜12GB)
- 指示追従の安定性 + マルチモーダル必要 → Gemma 3 27B(Q4_K_M で約21〜22.5GB)
- Llama 3.1 70B → 日本語業務には選ばない。42GB VRAM必要・公式サポートは英語を含む8言語のみで日本語は非対応。後継の Llama 3.3 の検討を推奨する。
「Ollamaで動かせるのはわかった。でも、どのモデルを選べばいいのか。」
情シスや社内エンジニアが社内LLM導入を検討するとき、多くの場合ここで止まる。モデル名は知っている。量子化の概念も理解している。でも「うちの環境でどれが実際に動くか」「日本語の業務文書に使えるか」という具体的な問いに答えてくれるドキュメントが見当たらない。
この記事では、2026年6月時点で最も検討頻度が高い3モデルを、一次ソースで確認した数値で比較する。ベンチマークの出典・VRAM要件・ライセンスの制約まで含めて、選定の判断材料をまとめた。
この3モデルを比較する前提条件
対象環境はRTX 3090(24GB)・RTX 4090(24GB)・Mac Studio(M4 Pro以降)を想定している。社員50名以下の情シスまたは社内エンジニアが、OllamaかLM Studioで動かすことを前提とする。
なお「Llama 3.1 70Bが古い。Llama 3.3 70Bと比べるべきでは」という指摘は正しい。ただし、現時点でまだLlama 3.1 70Bを候補として検討しているケースが多いため、ここでは明示的に比較対象に含め、3.3への移行を推奨する形で整理した。
VRAM 12GB以下の環境(RTX 4070など)では、この3モデルのうち実用速度で動くのはQwen3-14BのQ4_K_M量子化のみになる。
3モデルの基本スペックと一次ソース確認
Qwen3-14B(Apache 2.0 / VRAM 約9〜12GB / 100言語以上)
Alibabaが開発するQwen3シリーズの14Bパラメータモデル。
公式モデルカード(Hugging Face: Qwen/Qwen3-14B)によると、コンテキスト長はネイティブ32,768トークン、YaRN拡張で131,072トークンに対応する。100以上の言語・方言をサポートすると明記されており、日本語は対応言語に含まれる。
VRAMの実測値はソースによって差がある。biton.co.jpの2026年5月版比較(Q4量子化)では約9GBと記載があり、Bored Consultantの実測記事(2025年6月)ではQ4_K_M量子化で12GBを計測している。実際の消費量はKVキャッシュや同時リクエスト数によって変動するため、9〜12GBの幅で見ておく必要がある。
クラスメソッドの調査(2026年6月)では「Qwen3-14BがQwen2.5-32B相当の性能を発揮する」と整理されており、パラメータ数に対してコストパフォーマンスが高いとされている。
Gemma 3 27B(Gemma独自ライセンス / VRAM 約21〜22.5GB / マルチモーダル)
GoogleのGemmaシリーズ最新27Bモデル。画像入力(マルチモーダル)に対応している点が他の2モデルとの差別化になる。
公式モデルカード(Hugging Face: google/gemma-3-27b-it)によると、4B・12B・27Bの各サイズで128Kトークンの入力コンテキストをサポート。140以上の言語対応を謳っており、日本語も含まれる。
VRAMはBored Consultantの実測記事でQ4_K_M量子化で21GB、fp16では63GBを計測。Awesome Agents(2026年ホームGPU LLMリーダーボード)では22.5GBと記載されている。biton.co.jpではint4量子化で14.1GBという数値もあり、量子化の実装方式によって差が出る。RTX 4090(24GB)なら動作するが、VRAMに対してタイトな余裕になるため、KVキャッシュの消費量を考えると長いドキュメント処理での速度低下に注意が必要だ。
ライセンスはGemma独自ライセンス(商用利用は許可されているが再配布・改変には条件がある)。Apache 2.0のQwen3とは異なる制約があるため、組織のポリシー確認が必要になるケースがある。
Llama 3.1 70B(Community License / VRAM 約42GB / 日本語非対応)
Metaが提供するLlamaシリーズの70Bモデル。英語圏でのコード補助・英語RAGなどの用途で実績が多い。
公式モデルカード(Hugging Face: meta-llama/Llama-3.1-70B-Instruct)が明記するサポート言語は英語・ドイツ語・フランス語・イタリア語・ポルトガル語・ヒンディー語・スペイン語・タイ語の8言語のみ。日本語は公式サポート対象外だ。
VRAM要件はQ4_K_M量子化で約42GBとllmhardware.io(2026年5月更新版)が記載している。48GB統合メモリが必要になる計算で、Mac mini M4 Proでも動作可能だが、専用GPUに比べて速度は大きく制限される。RTX 4090単体では搭載できない。デュアルGPU構成か、高メモリ搭載のMac Studioが前提になる。
VRAM別・環境別の動作可否早見表
| 環境 | VRAM | Qwen3-14B (Q4_K_M) | Gemma 3 27B (Q4_K_M) | Llama 3.1 70B (Q4_K_M) |
|---|---|---|---|---|
| RTX 4070 Ti | 12GB | ◎ 約9〜12GB | × | × |
| RTX 3090 / 4090 | 24GB | ◎ 余裕あり | ○ タイト(21〜22.5GB) | × |
| Mac M4 Pro (48GB) | 48GB統合 | ◎ | ◎ | ○(速度制限あり) |
| デュアルRTX 3090 | 48GB | ◎ | ◎ | ○ |
| Mac M4 Max / Ultra (64GB+) | 64GB以上統合 | ◎ | ◎ | ◎ |
KVキャッシュの補足: 上記はモデルウェイト単体のVRAM消費量。長いドキュメントをコンテキストに入れる業務(会議議事録要約・契約書確認など)では、KVキャッシュ分が追加で乗る。Gemma 3 27BをRTX 4090で動かす場合は、長文処理でOOM(メモリ不足)になる可能性を念頭に置く必要がある。この点を明示している比較記事はほとんどない。
日本語対応性の現実 — 社内業務に使えるか
Qwen3-14B — 日本語の実用性は現時点で最有力だが、Thinkingモードに注意
日本語のローカルLLMとして、2026年5月時点ではQwen3-14Bが最有力の選択肢になっている。クラスメソッドの調査でも「日本語環境ではQwen3-8BやQwen3-14Bの方が良い結果を得られそう」と整理されている。
ただし、Thinkingモード(拡張推論モード)には落とし穴がある。Zennの実測記事(Ollamaでの6モデル比較)では、qwen3-14bの平均応答時間が111.9秒(avg_sec)に達するケースが計測されている。長文ビジネス分析タスクの成功率は3/3と高いが、応答速度が遅い。Thinkingモードをオフにする(/no_thinkオプション)か、Ollamaのパラメータで制御しないと、実業務では「返答が遅すぎる」という問題が出やすい。
また、Qwen3は中国企業(Alibaba)開発のモデルであることから、中国製ソフトウェアの使用を制限しているポリシーを持つ組織では導入前に確認が必要だ。
Gemma 3 27B — 指示追従の安定性は高い。日本語は次点
Googleが開発するGemma 3 27Bは、英語タスクでの指示追従の安定性が高く評価されている。多言語対応を謳っており日本語も含まれるが、日本語専用のベンチマーク(ELYZA等)での実測値は現時点で確認できていないため、日本語業務での性能をQwen3と並列で比較する数値は持ち合わせていない。
マルチモーダル対応(画像入力)が必要なユースケース、たとえば「製品画像から仕様書のドラフトを生成したい」といった要件がある場合は、Gemma 3 27Bが唯一の選択肢になる。
Llama 3.1 70B — 日本語業務には選ばない
公式が明示しているサポート言語は8言語(英語・ドイツ語・フランス語・イタリア語・ポルトガル語・ヒンディー語・スペイン語・タイ語)であり、日本語は含まれない。クラスメソッドの調査でも、後継のLlama 3.3について「英語中心、日本語で質問しても英語で返答も」と記載されている。
日本語で入力してもある程度は返答するが、公式非対応のモデルを業務で使うリスク(出力品質のばらつき・サポート対象外の挙動)は考慮が必要だ。英語のRAGや英語コード補助が主目的なら候補に入るが、日本語業務が主軸の環境では選ばない方がいい。
ベンチマーク数値で見る性能差
Awesome Agents Home GPU LLM Leaderboard(2026年6月時点取得)の数値を使用する。
| モデル | MMLU | GSM8K | MATH | HumanEval | GPQA |
|---|---|---|---|---|---|
| Qwen3-14B | 81.1 | 92.5 | 62.0 | 72.2 | 39.9 |
| Gemma 3 27B | 78.6 | 82.6 | 50.0 | 48.8 | 24.3 |
| Llama 3.3 70B(参考) | 83.6 | 95.1 | — | 80.5 | — |
脚注: Llama 3.3 70Bの数値はAwesome Agentsリーダーボードより引用。Llama 3.1 70Bの独自ベンチマーク数値についてはlocalaimaster.com掲載の「Llama 3 70B参考値」として、MMLU 79.2%・HumanEval 67.0%・GSM8K 83.7%(VRAM Q4_K_M 約40GB)が参照できるが、モデルバージョンの差異があるため厳密な比較ではない。Llama 3.3の数値をLlama 3.1の性能として読み取らないよう注意が必要だ。
Gemma 4との混同に注意: 検索結果によっては「Gemma 3 27Bは97.9%」といった数値が出てくることがあるが、これはGemma 4(27Bまたは31B)の数値である。Gemma 3 27BのMMLUは上記の78.6%が正しい。
数値から読み取れること:
- 数学・推論(MATH・GPQA): Qwen3-14BがGemma 3 27Bを上回る。パラメータ数が少ないにもかかわらず。
- コード補助(HumanEval): Gemma 3 27Bの48.8%は低い。コード補助を主用途にするなら、Qwen3-14Bの72.2%か、Llama 3.3の80.5%が現実的な選択になる。
- 総合知識(MMLU): 3モデルとも近い水準だが、パラメータ数とVRAMの投資対効果でQwen3-14Bの優位が際立つ。
ユースケース別の推奨選定
| ユースケース | Qwen3-14B | Gemma 3 27B | Llama 3.1 70B |
|---|---|---|---|
| 日本語文書要約・議事録 | ◎ | ○ | × |
| コード補助(英語・日本語混在) | ○ HumanEval 72.2% | △ HumanEval 48.8% | ○(英語のみ) |
| 社内チャットボット(日本語) | ◎ | ○ | × |
| JSON抽出・構造化出力 | ○ | ○ | ○ |
| 英語RAG・英語社内知識ベース | ○ | ○ | ◎ |
| VRAM 12〜16GBの制約環境 | ◎ | × | × |
Qwen3-14BのThinkingモード問題(応答速度)については、Ollamaのnum_ctxパラメータ調整とThinkingモードの無効化で大部分は解消できる。量子化の詳細は量子化設定ガイド(4bit/8bit)を参照されたい。
ライセンスと調達リスク — 見落としがちな比較軸
ライセンスは「動けばいい」で終わらせると、後から組織のリーガルレビューで引っかかる。
| モデル | ライセンス | 商用利用 | 主な制約 |
|---|---|---|---|
| Qwen3-14B | Apache 2.0 | 可 | 帰属表示のみ |
| Gemma 3 27B | Gemma独自ライセンス | 許可(条件付き) | 派生モデルの公開・再配布に条件あり |
| Llama 3.1 70B | Meta Community License | 許可(条件付き) | MAU 7億人超の場合はMetaの追加許可が必要 |
実務で問題になりやすい点を整理する。
Apache 2.0のQwen3-14Bは、社内ツールへの組み込みや改変・再配布においてもっとも制約が少ない。ただし、前述の通りAlibaba(中国企業)開発であることから、政府機関・防衛関連・金融の一部など、中国製ソフトウェアの使用制限ポリシーを持つ組織では導入可否の事前確認が必要だ。
Gemma独自ライセンスは商用利用を許可しているが、条件を読まずに社外向けサービスに組み込むと問題が起きることがある。社内利用のみなら実質的に障壁は低い。
Llama Community Licenseは月間アクティブユーザー7億人を超えるサービスへの利用に追加申請が必要という条件があるが、社内業務ツールであれば該当しない。
選定の落とし穴 — 3モデルそれぞれの実際のネガ
Qwen3-14B: Thinkingモード過剰推論
Zennの実測記事(Ollamaでqwen3-14b実行)では、avg_secが111.9秒に達するケースが記録されている。Thinkingモードが有効な状態では、単純な要約タスクでも長い内部推論ステップを踏むため、体感レスポンスが著しく遅くなる。Ollamaで動かす場合は/no_thinkオプションか、モデルタグでqwen3:14b-q4_K_Mを明示的に指定してThinkingモードを制御することが必要だ。
Gemma 3 27B: コード補助に過大な期待をしない
HumanEvalスコア48.8%は、コード補助用途としては実用的な水準を下回る。コードレビューや補完を主目的にするならQwen3-14B(72.2%)の方が適している。また、VRAM 24GBのRTX 4090環境でKVキャッシュを消費しながら動かすと、長文処理でOOMが発生するケースがあるため、コンテキスト長の上限を明示的に設定することを推奨する。
なお「Gemma 3 27Bのベンチマーク97.9%」という数値がWeb上に出回っているが、これはGemma 4の数値だ。混同しないよう注意が必要で、比較記事を参照するときはモデルのバージョンを必ず確認する。
Llama 3.1 70B: 3つの構造的制約
第一に、Q4_K_M量子化で約42GBというVRAM要件はRTX 4090単体(24GB)では満たせない。第二に、公式日本語非対応。第三に、後継のLlama 3.3 70BがHumanEvalで80.5%と性能が上がっているため、今から新規導入するなら3.1ではなく3.3を選ぶのが合理的だ。現在3.1を使っていて3.3への移行を検討している場合、モデルの差し替え方法と互換性については別途確認が必要になる。
まとめ — モデル選定のフローチャート
以下の順で確認すると、ほとんどのケースで答えが出る。
-
日本語業務が主軸か?
- Yes → Qwen3-14B(次の問いへ)
- No(英語RAGやコード補助が主) → Llama 3.3 70B を検討
-
使用可能なVRAMは何GBか?
- 24GB以下(RTX 4090単体・RTX 3090)→ Qwen3-14B 一択
- 24GB(タイトな余裕で運用可)→ Gemma 3 27B も候補(マルチモーダル要件がある場合のみ)
- 48GB以上(Mac M4 Pro以降・デュアルRTX 3090)→ 3モデルすべて動作可能
-
用途は何か?
- コード補助が主 → Qwen3-14B(HumanEval 72.2%)
- 画像入力が必要 → Gemma 3 27B 一択
- 日本語要約・チャットボット → Qwen3-14B
-
ライセンス制約はあるか?
- 中国製ソフトウェア禁止ポリシーがある → Gemma 3 27B または Llama 3.3
- Apache 2.0のみ許容 → Qwen3-14B
GPU選定の詳細はローカルLLMサーバーのGPU選定ガイド、構築代行の費用感についてはローカルLLM構築代行の相場と依頼方法(公開次第リンク追加)を参照されたい。
ローカルLLM構築・運用の相談を受け付けています
モデル選定から環境構築(Ollama / LM Studio)・プロンプト設計・RAG連携まで、ローカルLLMの実装相談を受け付けている。
メッセージにVRAM量・OSとやりたいことの概要を書いて送ってもらえれば、構成案と費用感を返せる。