Hermes AgentをVPSで常時動かす費用と止め方
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はじめに
朝、スマートフォンの Telegram を開くと、Hermes Agent が夜のうちにまとめてくれた調査レポートが届いている。便利さを実感した次の瞬間、「このレポートを作るのに、AI の利用料はいくらかかったのだろう」と気になって、請求画面を開く指が止まる。
Hermes Agent は、Telegram や Discord から話しかけて作業を依頼できる AI エージェントです。手元のパソコンを起動したままにせず常時動かすため、VPS(ネット上に借りる自分専用の仮想サーバー)で24時間動かす構成が検討されます。
しかし、自分が見ていない時間にもプログラムが動き続ける構成では、「利用料金が膨らまないか」「知らないコマンドを勝手に実行されないか」「やめたいときに費用をどう止めればいいのか」という不安が残ります。
任せて動かすために必要なのは、仕組みのすべてを理解することではなく、何が起きたときに、どこで、どうやって止めるかという出口をあらかじめ把握しておくことです。この記事では、発生する費用の構造と、手元に持っておくべき4つの停止場所を整理しました。
Hermes Agent とは
Hermes Agent は、Nous Research が開発している、使うほど学んでいく(self-improving)AI エージェントです。
Hermes Agent 本体は無料のオープンソース(MIT ライセンス)です。Hermes Agent そのものに払うお金はなく、かかるのは選んだ提供元の AI の利用料です。VPS で動かす場合は、これに VPS の料金が加わります(次の節)。
使う LLM(大規模言語モデル)は選ぶことができ、Nous Portal、OpenRouter、OpenAI、自分で用意した接続先から選択できます。切り替えは hermes model で行うことができ、コードの変更は要りません。
名前の取り違えについての注意
Hermes という名称に関連して、いくつか混同しやすい点があります。
- Hermes 4: 同じ Nous Research が開発した LLM(モデル)の名称であり、エージェントプログラムである Hermes Agent とは別のものです。公式ドキュメントでは、Hermes Agent の内部で Hermes 4 を利用することは推奨されていません。
- Meta の Hermes: Meta が公開している React Native 向けの JavaScript エンジンにも「Hermes」という名称が使われていますが、まったく別のソフトウェアです。
公式の情報源は、公式ドキュメント(hermes-agent.nousresearch.com)および GitHub リポジトリ(github.com/NousResearch/hermes-agent)の2つです。
なお、Python のパッケージ管理ツールである pip(または PyPI、uv tool)によるインストールは、公式ドキュメントの「非対応(Unsupported)」の項目に記載されています。インストールに事前に必要なのは Git だけで、Linux では curl と xz-utils も使用します。Linux のインストールは、公式のスクリプトを実行する1行のコマンドです。ブラウザ操作機能が不要な場合は、導入時に --skip-browser オプションを付与して該当手順を省くことも可能です。
お金はどこで発生するか
Hermes Agent を VPS で常時動かす場合、費用が発生する場所は大きく分けて2つあります。
- VPS の利用料金: サーバーを稼働させておくためのインフラ費用
- モデルの API 利用料: AI に指示を送り、回答を生成するための利用料
API(プログラムどうしがインターネット経由で指示やデータをやり取りする窓口)の利用料は、利用したデータ量(トークン単位)に応じて発生します。
例えば、モデルの仲介サービスである OpenRouter を経由して利用する場合の単価例は以下のとおりです(2026年9月24日時点の数値)。
- Claude Sonnet 4.6: 100万トークンあたり 入力 $3 / 出力 $15
- DeepSeek V3.2: 提供元により異なり、100万トークンあたり 入力 $0.21〜$0.26 / 出力 $0.31〜$0.42 程度
OpenRouter は、モデルの利用料に上乗せをしません。ただし、クレジットを購入する際に手数料がかかります。
なお、公式リポジトリの issue には、1回の API 呼び出しごとにシステムの指示文やツールの定義などの固定データが含まれ、セッションを重ねるうちに入力トークンの量が費用の中心になりうるという利用者の報告(過去の版における報告であり、公式の基準値ではありません)もあります。1か月にいくらかかるかは、使う頻度や任せる作業で変わります。公式ドキュメントには、月額の目安は見当たりませんでした。
止める場所①: 支出の上限は OpenRouter の側で掛ける
費用の使いすぎを防ぐには、OpenRouter の側で支出の上限を設定しておく方法があります。
この記事で確かめた上限の掛け方は、OpenRouter を経由して使う場合のものです。Nous Portal や OpenAI などを直接使う場合は、この上限は効かないので、その提供元の側で上限の掛け方を確かめてから動かします。
OpenRouter では、発行した API キー(API を利用するための電子的な鍵)ごとに、利用可能なクレジットの上限額を任意で設定できます。さらに、利用額を監視して上限を超えたキーを自動で無効化する機能や、上限を日ごと・週ごと・月ごとに自動リセットする設定も用意されています。
確かめられた支出の上限の掛け方は、OpenRouter の側(プロバイダー側)で設定する機能であり、Hermes Agent 側の設定ではありません。公式リポジトリの issue では、過去に「予約実行が上限なしで呼び出しを続け、設定ファイルに支出上限を設定する項目が見当たらない」という利用者の報告が寄せられたことがあります(過去の版における報告であり、現行版に上限設定項目があるかは確認されていません)。そのため、支出の上限は Hermes の設定ではなく、OpenRouter 側で掛けておくのが無難です。
なお、Hermes Agent には、人が見ていない、チャットからの受け付け(ゲートウェイ)や予約実行のセッションで、ツールが同じ動きを繰り返したときに強制的に止める設定(non_interactive_hard_stop_enabled)があり、既定で有効になっています。ただし、これは費用を一定額で止める設定ではなく、公式もそうは書いていません。前の段落の利用者の報告のように、予約実行が呼び出しを続けることもあるため、費用の上限は OpenRouter の側で掛けておきます。
止める場所②: 鍵を無効にする
API キーやチャットボットの認証情報が外部に漏洩した、あるいは疑いがある場合は、速やかに鍵自体を無効化します。
- OpenRouter の API キー: OpenRouter の管理画面から、該当する API キーを即座に無効化(Disabled)または削除できます。キーを無効化すれば、そのキーを使用したすべての API 呼び出しが拒否されます。
- Telegram の Bot Token: Telegram のボット作成機能である
@BotFatherに対し、/revokeコマンドを実行することで、漏洩したトークンを即座に無効化して新しいトークンに再発行できます。
API キーなどの鍵は、鍵を置くための専用のファイル(~/.hermes/.env)に保管し、chmod 600 で自分だけが読めるように権限を絞ります。Hermes Agent の設定ファイル本体や、Git など変更の履歴を残す仕組みには書き込みません。
止める場所③: Hermes を止める
エージェントの処理そのものを止めたい場合は、実行状態に応じた停止操作を行います。
- 対話セッションの停止: コマンドラインで対話している最中は
Ctrl+C、チャットアプリ上では/stopと入力して送信することで、実行中の処理を中断できます。 - ゲートウェイの停止: Telegram などからの話しかけを受け付けて常に動いている部分(ゲートウェイ)を止めるには、SSH でサーバーに接続し、ConoHa のテンプレートの場合は
su - hermes-userで Hermes Agent 用のユーザーに切り替えてから、次のコマンドを実行します。
hermes gateway stop
ただし、hermes gateway stop は、いま動いているゲートウェイを止めるだけです。ConoHa のテンプレートの手順(User service)で登録した場合、VPS を再起動すると、ゲートウェイがまた立ち上がることがあります。再起動のあとも止めておきたいときは、登録したサービスごと外す次のコマンドを実行します。
hermes gateway uninstall
費用を確実に止めたいときは、②の鍵の無効化も合わせて行います。
注意が必要な点として、hermes gateway stop を実行してエージェントの常駐を停止させても、VPS 本体の稼働料金は止まりません。サーバー自体の課金を止めるには、次の手順でインフラ側の契約を操作する必要があります。
止める場所④: お金の流れを止める(ConoHa の場合)
サーバーの利用料金を完全に停止させる手順は、契約形態によって異なります。
時間課金の場合(停止ではなく削除)
ConoHa VPS の時間課金は、1時間ごとに料金が発生し、サーバーを削除した時点までの利用時間で料金が決まります。
時間課金の料金(税込・2026年9月24日時点):
- 1GB(2コア): 1時間 2.5円(時間課金の月の上限 1,065円)
- 2GB(3コア): 1時間 3.7円(時間課金の月の上限 2,033円)
- 4GB(4コア): 1時間 7.3円(時間課金の月の上限 3,608円)
時間課金は1ヶ月使い続けても、月ごとに定められた上限金額を超えて請求されることはありません。
ただし、サーバーを停止(シャットダウン)しただけでは課金は止まりません。サーバーが動いているか停止しているかにかかわらず、契約数に応じて料金が発生し続けます。時間課金の課金を止めるには、サーバー本体の削除が必要です。サーバーを削除した時点までの利用時間で料金が確定しますが、一度削除したサーバーを復旧することはできません。
まとめトクの場合
ConoHa VPS には、一定期間分を一括前払いで契約する「まとめトク」という制度もあります。
まとめトクは、利用期間中の途中解約を受け付けていません。また、サーバーを即座に削除することはできず、自動更新の設定を OFF に変更しておく必要があります。自動更新は初期設定で ON になっていて、契約満了日の7日前に次の期間の料金が決済されます。契約満了日の7日前から満了日までは、自動更新の設定を変えられません。やめると決めたら、満了日の7日前より前に OFF にしておきます。OFF にしておけば、契約期間の終了とともにサーバーが削除され、次の期間の料金はかかりません。
まずは時間課金で短期間だけ動かして動作を確認し、継続して利用する方針が固まってからまとめトクを検討する、という順番で進めると判断しやすくなります。
動かす前に決めておくこと(安全面)
エージェントを動かす前に、サーバー環境の安全基準を確認しておくことが重要です。
- 防壁は OS のみ: 公式のセキュリティ方針では、敵対的なプロンプトや動作に対する唯一の境界線は OS(オペレーティングシステム)そのものであるとされています。エージェント内部の承認確認画面や、出力の伏せ字、パターン検査などは、安全を担保する隔離境界にはなりません。
- コマンド承認モード: 危険なコマンドを実行する際の承認設定は、既定で
smartになっています。確認を一切行わないapprovals.mode: off(通称 YOLO)は、検証用の隔離環境以外では使用しません。予約実行(cron)が危険なコマンドに遭遇した場合は、既定で拒否(cron_mode: deny)されます。 - root 権限で動かさない: ゲートウェイやエージェントプロセスを、管理者権限である root で実行してはいけません。権限を絞った一般ユーザー環境で動作させます。
- 許可リストの設定: チャットアプリから話しかけられる利用者は、許可リスト(Allowlist)で明示的に指定します。全員を許可する設定(
GATEWAY_ALLOW_ALL_USERS=true)は使用しません。許可リストを設定せず、全員許可も指定していない状態では、既定で全ユーザーからの話しかけが拒否されます。 - ゲートウェイを直接公開しない: ゲートウェイや API を、VPN や Tailscale、ファイアウォールなどの保護なしに直接インターネットへ公開してはいけません。ConoHa VPS のテンプレートでは、外から受け付ける接続の入口(ポート)は SSH(手元のパソコンからサーバーに安全に接続して操作するための仕組み)の 22 番だけで、アプリケーション用の入口は開いていません。
- コマンド実行の分離環境: 公式ドキュメントでは、本番運用のゲートウェイにおいて、エージェントが実行するコマンドをサーバー本体から切り離すため、Docker などの分離バックエンドの利用を推奨しています。ConoHa のテンプレート手順では VPS 上で直接動作させる「Local」を選択する構成になっており、この場合はサーバー本体との切り離しが行われません。Local で運用する場合は、その VPS を Hermes Agent 専用の環境とし、重要なファイルや他のシステムと同居させない運用が無難です。
- 外部スキルの確認: 他者が作成したスキル(追加機能)を導入する際は、説明文(SKILL.md)だけでなく、Python スクリプトなどの実行コードの中身を事前に直接確認してから組み込みます。
- 機密データの取り扱い注意: ConoHa を運営する GMO インターネット自身も、業務メールや顧客情報などの機密データを扱う用途、金融や医療などの高度な機密性が求められる用途、アップデート管理を自力で行うことが難しい場合には、事前の十分な検討を推奨しています。
初期設定の具体的な手順やサーバー全体の安全管理については、VPSセキュリティ初期設定チェックリストでも確認できます。
更新の習慣
Hermes Agent は活発に開発が進められており、リリースはほぼ毎週公開されています(2026年9月だけでも 14日、21日、24日にリリースが行われ、直近の2つのリリースの間だけでも約460件の変更が取り込まれました)。
公式ドキュメントでは、セキュリティ上の修正を適用するために、定期的に以下のコマンドを(hermes-user に切り替えてから)実行して最新状態を保つよう案内されています。
hermes update
週に1回など、決まったタイミングで hermes update を実行する習慣を作っておくことで、公開された修正を取り込みながら運用を継続できます。
どこで動かすか
常時動かすための環境としては、自分で VPS を借りる方法と、運用を任せるマネージドサービスを利用する方法があります。
ConoHa VPS
ConoHa VPS では、Hermes Agent の実行環境を自動構築するスタートアップスクリプト(テンプレート)が提供されています。スタートアップスクリプト自体の利用料は無料です。
セットアップ時に専用ユーザー(hermes-user)の環境が自動で作成されます。セットアップの途中で「User service」を選ぶと、SSH の接続を切ったあとも、ゲートウェイが裏で動き続ける設定が有効になります。
ConoHa の文書に記載されている動作環境の数値は、CPU 1コア以上、メモリ 最小1GB・推奨2GB以上、ディスク空き容量 5GB以上(推奨10GB以上)です。これらは ConoHa の文書に記載された目安であり、Nous Research 公式が定めた要件ではありません。モデルは API 経由で呼び出すため、サーバー側に高価な GPU は必要ありません。
なお、管理画面のブラウザコンソールでは記号が正常に入力できない場合があるため、公式の案内に従い SSH クライアントを使用して接続・設定を行います。
XServer VPS の現状
XServer VPS(通常)のアプリイメージに Hermes Agent はありません。AI ツール向けとして用意されているのは Claude Code、Codex CLI、Dify、Gemini CLI、n8n、OpenClaw の6つです(2026年9月24日時点)。
また、XServer VPS は 2026年9月17日より新規受付を一時停止しており、受付再開は 2026年11月中の予定と案内されています。そのため、XServer VPS を前提とした過去の手順を参考に新しく契約することはできません。
自分で VPS を持たない選択肢(マネージド型)
Linux サーバーのコマンド操作や更新管理を自分で行わず、管理をプラットフォーム側に任せる選択肢もあります。
- ロリポップ!AIエージェントクラウド: VPS を構築することなく、Hermes Agent や OpenClaw などのエージェントを利用できるマネージドサービスで、月1,200円(税込)です。この月額に AI のモデルの利用料は含まれず、使った量に応じて各提供元から別に請求されます。自分の API キーを使える提供元に OpenRouter は入っていないため、支出の上限は、使う提供元の側で掛けます。
- Hermes Cloud: Nous Research 公式が提供するマネージドサービス(月額プランごとに所定の利用クレジットが付与される形式)も存在します。
違いは、止める場所を自分の手元に持つか、サービス側に任せるかです。サーバーの操作や更新を自分で続けられるなら VPS、それを任せたいならマネージド型、という分け方で考えると選びやすくなります。マネージド型を選ぶ場合は、月額に AI の利用料が含まれるかを、申し込む前にそれぞれの案内で確かめておきます。
まとめ:何が起きたら、どこで、どう止めるか
Hermes Agent を VPS で常時動かす際は、事態に応じて止める場所を把握しておくことで、落ち着いて対処できます。
| 起きたこと・目的 | 止める場所 | 操作内容 |
|---|---|---|
| 費用の使いすぎを防ぎたい | OpenRouter | API キーごとに支出上限を設定する(日・週・月ごとの上限設定や自動無効化) |
| 鍵やトークンが漏洩した | OpenRouter / Telegram | OpenRouter 管理画面でキーを削除・無効化、@BotFather で /revoke |
| エージェントの動作を止めたい | VPS 内部 | 対話中は Ctrl+C や /stop、常駐ゲートウェイは hermes gateway stop(再起動のあとも止めておくなら hermes gateway uninstall) |
| サーバーの課金を止めたい | ConoHa VPS | 時間課金ならサーバーを削除、まとめトクなら自動更新を OFF |
止める場所を把握したら、週に1回程度のペースで hermes update を実行し、環境を新しく保つ運用を心がけてください。